逃飛

あいつが探している。見ないでも気配でわかるさ。
ほら、今窓の外に立って中を見回している。
ぼくは物陰でじっと息をひそめる。
あいつが通り過ぎる。ぼくはそろりと階段に向かう。
気づかれないように。だが階段は硬い靴音を響かせる。
まずいよ。腹に力を入れ、数段をいっきに飛び越す。
身体はねばりつく空気の中をスローモーションで泳ぐ。
気づかれた？思い切って手すりを乗り越える。
あいつの息が近い。背後で空を切る。一瞬の微分、の微分．．

身体は宙に漂う。ぼくは空の海中を泳いでいる。
街が眼下に広がる。色を喪ったビルの群れ。見慣れた未知。
それは立ち並ぶ墓標。この夢を生きて死んだ「ぼく」達の。
ぼくはその墓標にダイブする。現実という死の世界に。

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［comment］小さい頃は結構こんな、怖いけどわくわくする夢を見ていたような気がします。
Folio、休刊なんですね。短い間でしたがいろいろお世話になりました。
スタッフやクリエイターの皆様、お疲れ様でした。
いつかまたお会い出来る日を楽しみにしてます。Hasta la vista!
［site］Period Three