Folio Vol.10目次など

編集後記

Reading a book is like re-writing it for yourself.
You bring to a novel, anything you read, all your experience of the world.
You bring your history and you read it in your own terms. ――Angela Carter――

■ESSAY+INTERVIEW「わたしたちは、なぜ物語を読むのか紡ぐのか」
※エッセイ
 わたしならこんなエッセイ難しくて書けないや…と思いながら、投げかけた質問。三者三様の答えを頂きました。難しかっただろうなあ…おつかれさまです。スタンスこそいろいろですが、書くということへの真摯な思いは共通。小説を書く人の生の言葉を聞いてみたかった。(ぱ)
 物語を書いたり読んだりすることは恋をすることに似ている様な気がする。(サ)
※インタビュー+対談
 Folioに参加してくれていた添野慎太郎さんが楽月慎という名でデビューしました。わーい。おめでたいー!!とばかりに、忙しい彼を捕まえて二人がかりで質問攻めにしたら、今度は逆襲をくらい対談をするはめになりました。インタビューと、楽月+ぱそ子+サイキの対談。最後だから弾けました。とても楽しかった。ありがとう。(ぱ)
 急遽決まった鼎談で、本当はもっと作品について突っ込んで聞きたかったのですが、あまりに急だったんで、小説トリッパーが見つかりませんでした。きっとウチの猫が喰ってしまったんだと思います。(サ)
■小説 TRUE STORY
実際に自分が体験したことを元に小説を書いてくださいとお願いしてみました。(ぱ)

※君が彼女を好きだったとき/ ハシモト
 男の子が数人集まって、わーわー馬鹿やってる光景が好きです。にこにこしながら読みました。え、萌えてませんってば!!(ぱ)
 僕があの娘を好きだったとき、僕はまだ童貞で誰かを好きになることと愛されることの区別がついていなかった。目隠しをしたままで100メートル走をしているような気分だった。今は、きっと目を隠して走ることができなくなっている。手探りで確かめながら、恐怖を感じながら。。。あの頃が、とても懐かしい。(サ)

※体験談フィクション/ 石川
 降りしきる雨のようにしみこむ言葉。転がり実在する形容詞。膨らみ広がる固有名詞。(ぱ)
 暗闇を走り続けている。君の元にただたどり着くために、そして大した用事もないのにこじつけて、ただ君の顔を今、見たいんだ。君と話したい。とりとめもないこと、とりとめもあること、そうだ。君の顔を見たいんだ。免許を持っていない僕は自転車で駆ける。早朝の青梅街道を。きっと君は待ってくれている。そう願いながら。(サ)

※エレベーター/ 歪
 ねえ、どこからが浮気だと思う? 恋人たちが浮気という言葉を定義していく。まるで手持ちの札を一枚ずつ切っていくかのように。カード選びは慎重に。このゲームは、負けたら終わり。(ぱ)
 君と彼女とは比べることができない。ねえ、どうしてそんなに私とあの人とどっちが大事だなんて言うんだい。本当に大事なのは、ねえ、わかってるだろ。きっと。(サ)

※アリサのカウンター/ 荒木スミシ
 限られた時間、限られた場所で出会ったからこそ、垣間見える TRUE STORY があるのかも。(ぱ)
 彼女とはあるクラブで会って、そのままホテルに行ったんだ。僕も彼女も酔っていたんだよ。ぐでんぐでんに正体も忘れるほど。だから、僕たちは何もしなくて彼女の打ち明け話を訊いたんだ。私はダメな女なんだとか、いい男に巡り会えないんだとかいうような。ねえ、ほんとだよ、もう二度と彼女に会わない。ほんとに。ほんとに。。。
 mixiで今回の小説を募集をしたら、荒木さんから反応を頂いてとてもうれしかったです。(サ)

※そして眠たげな眼をした男はおもむろに、こんな話をしていった/ 岡沢秋
 こんなふうに語り始められたら、わたしはその男の前を離れる事が出来なくなるだろう。額から汗が流れ落ちるようなじっとりした暑さ、ひらひらと舞う蝶、祭囃子。ノスタルジックな情景が不思議な迫力で迫ってくる。(ぱ)
 僕は今、じっと喫茶店の窓から人々が歩いているのを見ている。じっと様々な人が流れて、行き交う街の流れをじっと見て、ねえ、どうしてその中に君はいなんだろう。君が歩いているところを見たい。君が誰かと話しているところをじっと見てみたい。そして思うんだ。僕は崩壊した古城でいつまでも佇んでいる幽霊なのだ。君はそして観光客を装ってやってくる現実なのだと。(サ)

※あとがきにかえて/ オカヤマ
 もし人生をやり直せるとしたら? きっと何度でもわたしは小説を書いているんだろうな。(ぱ)
 ねえ、君に僕の友人を紹介したいんだ。佐々木といって、昔からの友人でロックとブルースが好きで世をはかなんで小説とか書いている男さ。ヤツは酷い男さ。いつまでも夢ばかり語ってるような人間の屑だ。きっとヤツはのたれ死んだりするだろう。やがて、ああ、夢に埋没してゆくだろう。ねえ、知ってる? 所詮類友さ。(サ)

※ヨークシャテリアが氾濫/ 朝倉
 どんな不条理だってシステムに組み込まれて消化されてしまえば、あとは流通していく。流通したものが常識になる。わたしたちは、そんな世の中に生きている。(ぱ)
 ねえ君は猫派?犬派?僕はきっと猫がいいな。君のように柔らかでやさしく穏やかな猫が。にゃーと鳴いて、そして甘えてくるような。君はきっと犬がすきなんだろうなあ。ねえ、君が猫なら僕は君を100匹でも飼うことにするよ。君は100匹でぎゃーぎゃーと騒いで暴れて、反乱を起こしても抱きしめてあげるよ。(サ)

※LOOM/ 佐藤尚志
 冬の部屋で窓を開ける。張り詰めた寒さと緊張感と美しさ、そして殺風景な部屋とそこにいる二人。読みながら、心も体も身震いするような物語。(ぱ)
 君のことをどう思っているかだなんて、きっと言えない。どんなに恥ずかしい言葉が溢れてしまうか、どんなにとりとめもないか、どんなに正直な言葉にしようとしても、どうしても嘘みたいに聞こえてしまうだろうから。ねえ。君と出会ったのは、きっと運命なのだと思う。君と愛し合うことになったのは、前世からの深い絆によって結ばれているんだと思うんだよ。ねえ。
 以前、Folioで募集をしていたら手を挙げてくれてうれしかったです。やはり反応があると嬉しかったり。メールを頂いてからだいぶ経ってからのお返事でしたが、原稿を頂きとても感謝しております。ありがとう。(サ)

※カメラ/ 寒竹泉美
 僕は君の姿を写真に撮ると君はまるで別人のように、いや、千秒のうちの一瞬の最もすばらしい笑顔で写真に納まるんだけど、ねえ、君の笑顔はそんな一瞬の隙間のようなものじゃない。もっと千変万化する無数の君がそこにいて、写真に写ったのはきっとそのたった一瞬だけの君だ。そんなものは君の魅力の千分の一に過ぎないのだ。(サ)

※イノガシラ街道沿いで/ サイキカツミ
 残された者たちは、先に行ってしまった者の痛みを引き受ける。どんなに大切に抱えていても、やがて、その痛みは、乾いて磨り減って古びていく。きっとそれでいい。ほら、もう痛くないから一緒に笑おう。(ぱ)
 僕のうちは昔青梅街道沿いにあった、あの部屋はもう使いこまれてかなり古びたビルで、ずっとひっきりなしに車が行き交っていたよ。そのビルの屋上から見る明け方、夕方の風景はとても幻想的で、この東京の街をぐるりと見回すような、そして、全てが遠くみえるような風景だったんだ。今度君に見せたいな。(サ)
■Photo:Portrate
カメラが切り取る TRUE STORY。ポートレートを中心に集めさせて頂きました。

※ヤマダ"ramy"シュンサイ
 夏の青空のように力強く突き抜けた写真。見ていると脳が揺さぶられる。世界覆っていた膜が剥がれ落ちる。わたしたちの住む世界は、本当はこんなにも鮮やかなんだ。(ぱ)
 溌剌とした写真で、お気に入りは森の中とあと表紙に使用させて頂いた写真です。いいなあ。(サ)

※八津谷泰三
 今にも生き生きと動き出しそうな母子。思わず微笑んでしまう。母が子に、子が母に向ける笑顔って強くて眩しくて温かい。太陽のようだ。(ぱ)
 自然光の写真がとてもいい。母子の姿がなんともいえず、サイトにある写真の中からこの一連の写真をお借りしました。見てるだけで僕は幸せな気分になりました。いい笑顏だなあ。(サ)

※平野高志
 透明な世界観の中に痛みを伴うような切実さが垣間見える。心を透かし見られているようで、どきどきしながら眺めた。(12/21〜1/19 平野さんの写真展が、大阪のONE PLUS 1 galleryで開催されます。古い民家を改造した素敵なギャラリーです。是非。)(ぱ)
 最後の砂丘の写真はぐっとくる。エロスと乾いた風、そして対象との距離感が伸縮自在な感じがして、カメラと被写体がキスしてる。(サ)

※R★MI
 公園、鳩、子供たち、そして本体以上に雄弁な影。モノクロームの世界が、日常の光景では見えてこないストーリーを浮き彫りにする。(ぱ)
 今はサイトを閉鎖してしまったのですが、以前、R★MIさんが開いていたサイトには多くのモノクロ写真があって、僕はとても好きでした。今回は我が儘を言って、モノクロで撮ってくださいと頼んだのですが、うん。ありがとう。子供と一緒に遊んでいるような気分になります。(サ)

※RHiZOME
 躍動するアフリカの子供たち。彼らは全身を使って生きている。彼らは全身でものを語っている。彼らの声が写真から聞こえてくる。(ぱ)
 アフリカの子供たちの目が素晴らしい。とてもいい目をしている。僕はオトコの子が二人で踊ってるような写真がとても好きです。(サ)
■WORDS
※7 cards, 6 stories/ 茶石文緒
 この企画は、小説のテーマが決まったときにこんな試みはどうでしょうと文緒さんが持ち込んでくれた企画。7人の友人に手紙を書いて絵葉書を送ってもらい、その絵を元に文緒さんが物語を考える。7人の友人達と作者と読者とをゆるやかにつなぎ合わせる6つのストーリーが生まれました。(ぱ)
 文体をまず見てください。それぞれにそれぞれのキャラクターと文体を書き分けて生き生きと描写されているストーリーは、一瞬の情景と「何か」に出会ったときの感情に溢れています。言葉の魅せる7変化。ありがとう。(サ)

※眩んだ目で見た最後の夢/ ニィナチカ
 一緒に紡いだはずの真実は、二人が離れると変わってしまう? それとも、最初からこれが真実だった? 届かなかった言葉を拾い、一つ一つ織りあげた写真詩集。(ぱ)
 言葉はどこからくるのか。詩情と言語の相関関係の美しさ。モノクロ写真がとてもいい感じで、とても素敵だ。(サ)
■REPORT
今回、TRUE STORYということで、真実の出来事を小説という物語だけでなく現実の事実を掲載したいと考えていたところ、白石さんがメルマガからの転載を許可してくださいました。ニューオリンズの水害、パキスタンの地震など、このところ、天災の被害をニュースなどで目にします。実際に現地で体験して、記事にされた白石さんのアンダマンのレポートは、生半可な虚構などを打ち壊す力があるように思えます。ありがとうございました。(サ)
■PICTURE
昨夜見た夢というテーマで作品を描いてもらいました。作品と本人による解説。夢って、現実よりもよっぽど生々しい。

※追われる /basil
 こわいこわい。夢を描いてとお願いしたのですが、これはぐっとつかんで離してくれない悪夢の、だが、どこかで懐かしいような気持ちもあり、引き込まれました。ありがとうございます!(サ)

※逃飛 /Key
 物語のような恐竜の、続きがとても気になる夢です。どうしてそこに恐竜がいて、それからどうなるのか。知りたい。そして浸りたい。ありがとうございます!(サ)

 
ぱそ子(寒竹泉美) 作家のたまご
 第10号のテーマは、TRUE STORY。なかなか難しいテーマでしたが、結果として最終号にふさわしい企画と力作が集まりました。ありがとうございます。また、写真やウェブに関して全く素人のわたしに(きっと)呆れながらも、根気強くやりとりしていただいた写真家の方たちのおかげで、念願のポートレート特集を組む事が出来ました。
 書き終えた物語の中には、自分でも知らなかったわたしが息づいていて、はっとさせられる。その出会いが、堪らなくいとおしい。ものを作る、表現する、そして表現に感動するという体験は、自分のTRUE STORYに出会う行為。ぼろ雑巾のように擦り切れて鬱々と過ごす日常だけが、わたしたちのTRUEではない。
 さて、Folioは、今回をもってしばらくお別れです。今まで見に来てくださった方ありがとうございました。Folioという場は解散するけれども、いいものを作って届けたいというわたしたちの思いは、これからも続いていきます。Folio参加者のこれからの活躍を見守っていただけたら幸いです。
 わたしが、参加者として編集者としてFolioに関わってきて、もう2年になります。早いですね。Folioでわたしが得た一番のものは何といってもたくさんの人々との『出会い』でした。Folio編集者という口実で、多くの表現家さんたちと出会い、交流し、刺激を受ける事が出来ました。そして、Folioを今、読んでくださっているあなたとも出会えた。感謝感謝。
 最後に、(内輪話だけど最後だからいいよね)立派な舞台を用意してくれた徳保さん、ありがとう。どの分野の表現家さんに対しても、胸を張ってFolioに参加しませんかと言えたのは、立派な舞台があったからこそです。そして、幅広い分野の知識とセンスで記事の良し悪しを判断し、表紙のデザインもこなし、どこからかすごい人を引っ張ってくるFolio発起人のサイキさん。彼らのおかげで、本当にのびのびと好きなことをやらせていただきました。
 ここをご覧くださった皆様、またどこかで会いましょう。社交辞令ではありません。本当にまた会いましょう。
徳保隆夫 趣味のWebデザイン

2003年7月30日にサイキさんから届いたメールが全ての始まりでした。突然で済みませんが、今、Web上の有志を募ってこのような企画を考えています。(URL略)それでお願いなのですが、徳保さんに原稿をお願いいたしたいと思いまして、メールさせて頂きました。原稿内容は創作ではなくコラムでお願いしたいのですが(以下略)……あれから2年余、遠くまで来たのか、同じところをぐるぐる回っていただけなのかは読者の皆様のご判断にお任せしたいと思います。

高校時代、文芸部で編集長を担当した経験がある私にとって、原稿を集めて雑誌を作るのは懐かしくも楽しい体験でした。まさか再び編集に携わることはあるまいと思っていただけに、昨夏よりウェブ製作作業員として関わることになったことには不思議な縁を感じました。企画などクリエイティブな仕事からは基本的に距離をおいてきましたが、それでよかったと思います。1年間、裏方仕事に精を出してきた甲斐あって、今回こそはほぼ予定通りの発行になるのではないかと思います。

作家の方々も裏方のメンバーも短期間にずいぶん入れ替わりがありましたが、多くの人々と交流することができたと考えれば、あれもこれもひっくるめてプラスだったのかな。Folio は第10号をもって休刊となります。これまでご支援・ご協力をいただいた方々、そして読者の皆様に感謝いたします。どうもありがとうございました。

サイキカツミ ぞうはな
今回は(も)編集後記が長いので手短に。今まで参加してくださった方々、協力してくださった方々、本当にありがとうございました。長いようで短い2年半でしたが、あっというまでした。様々な方に協力して頂いたのですが、全くの無償で原稿や写真や絵を提供して頂き、大変だけど嬉しいことが多かったと思います。始めから参加してくださった方々、見守ってくれた方々、そして後半の一年、原稿は遅いわ仕事はしないわの編集長でかなり手を煩わせてしまった、徳保さんとぱそ子さんには言葉で言い表せないほど感謝しています。ありがとう。
そして、ずっと読んでくださった方々、ありがとう。
あまりの多忙によって今回で一旦休刊させて頂きます。今後の予定は決まっておりませんが、また何かの動きがあれば、このサイト上で発表したいと思います。とりあえず、一旦、解散。 今後の皆様の発展とご多幸をお祈り申し上げます。本当にありがとうございました。

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