花より団子の食耽記

argon

第一回 「パンの日」の昼食を再現せよ

前編

映画を観ていて、小説や漫画を読んでいて、ストーリーよりも出てくるメシに気をとられ「あぁ、それを食わせろよ!」と悶々とした体験はないだろうか。
そんな思いを実現するべく、立ち上がったこの企画。
食いしん坊、初回から迷走致します。

今回のお題
『刑務所の中』花輪和一・原作/崔洋一・監督)より
「パンの日」の昼食を再現せよ

『刑務所の中』の漫画なり映画なりを見た人ならば分かるであろう。この作品、とにかく食事についての描写が多い。そこはムショの食事であるからして、麦御飯や煮物に佃煮といった質素な食事ばかりなのだが、これが実に美味しそうなのである。そしてまた受刑者たちの甘いものへのこだわりが半端ではない。見ているうちにこちらにまで「あま〜い」ものへの欲求が生まれてきてしまう。

さて、そういった中でも目を引くメニューがこちら。

「コッペパンに小倉小豆とマーガリン、そして角切り林檎入りフルーツカクテル」

ここでのセリフがまた秀逸だ。
「フルーツの甘い香りの中から生まれた日本の妖精がギトギト光るマーガリンや 小倉小豆の上を華麗に舞っている」

ああ、堪らん。

……ちょっとまて、こんなものコンビニにでも行けばありつけるじゃないか。
とお思いの方、いや全くその通りなのである。
受刑者生活にあってこそこのメニューは輝く。
この飽食の時代、シャバの人間ならばこれしきの甘いもの、いくらでも頬張る事が可能だ。
しかしそんな我々にも彼らの感動を、少しでも味わう術はないのか?

という訳で取り敢えず、そこのところは小倉小豆を煮る手間をかける事で補ってみる事となった。

それではいざ、再現。


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