vol.4

エロビデオの作り方

7 『プレス』

 審査と並んで時間のかかる作業。ようはマスターテープと、何某かの倫理団体の審査を通っているという証明書を工場に渡してプレスしてもらうだけなのだが、これが約1ヶ月かかる。例えばソフ倫を受審した商品が発売されるまでに、プレス期間と合計して最低でも2ヶ月はかかってしまうのである。とんでもないタイムラグだ。これでは到底時事ネタをパロディにしたAVや、旬のある内容の物など商品化できない。もしくはしづらい。例えば夏休みネタのAVを夏休みに発売するには、5〜6月には撮り終えている必要があるのだ。春先に夏休みって言われてもなぁ・・・。

 この点に関して、私はある打開策を考えている。近々公表できるようになると思うので、お楽しみに。まあ、楽しみにしてくれる人がいるかどうかは知らんが。

8 『デザイン』

 これはDVDの盤面や、ジャケット(商品パッケージ)、宣伝用のポスターやチラシなどの作成のこと。基本的に、審査期間中やプレス期間中にささっと仕上げてしまうことが多い。またAV業界ではジャケットデザインがかな〜り重要だと言われており、商品の内容が面白くなくても、ジャケットが素晴らしい出来ならそれなりに売れてしまう。結局、お店の人は(セル、レンタル問わず)業界誌の広告や郵送されてきたチラシのジャケット写真を見て仕入れを決めるので、内容をいちいち把握できるわけではないのだ。お店に買いに来た(借りに来た)お客さんなら尚更のこと、前もって内容を知ることはまず出来ない(店内でサンプルビデオを流している場合は別)。したがってあくまで騙し商売だが、人の目を惹くようなデザインのジャケットを作り、内容は過去に発売した商品そのままというやり方も可能といえば可能。それで十分な利益が上がったりもする。ただし、そのやり方をすると業界内での信用が地に落ちるので、本来のメーカー名を一切出さず、適当なメーカー名をでっち上げてジャケットに記載し、追及を逃れようと画策する場合がほとんど。まあ結局バレバレなんだけど・・・。

 昔から言われていることだが、ジャケットやチラシに騙されるなと。信用のおけるメーカーの物を買うか、様々な媒体で出来るだけその商品の情報を調べてから、購入なりレンタルなり仕入れなりをすべきだと思う。

9 『販売(公開)』

 販売ルートは大きく分けて2つある。一つは『レンタル』でもう一つは『販売(セル)専用』。先にも述べたように、このルートによって受審する倫理団体が変化し、モザイクレベルや場合によっては内容にも規制が入る。例えば近親相姦や、殺人描写といった内容がNGな団体があるのだが、そういった団体ごとに定められたNG項目に当てはまるような内容の作品は審査を通らず、販売できないのだ。また審査を通った商品でも、モザイクが一部外れているなどのトラブルが後に発覚し、商品回収騒ぎに発展することもある。団体のチェックというのは、実は万全ではないのだ・・・。ちなみにモザイク外れが原因で警察に踏み込まれた場合、メーカーにとって大変恐ろしいことになる。そのための団体なのだが、その団体の力が弱かったり、警察が見せしめ欲しさに本気だったりすると・・・。い、いやこの話題も別の機会にということで・・・。

 話を変えて、最近はインターネットの普及が進み、販売ルートとしてWEBという存在が注目されるようになってきた。だが、現段階ではどのメーカーもサンプル動画を配信する程度に止まっており、『WEBのみでしか見れない作品』という所までは到達していない。今後はネットのみでの販売(ダウンロード販売)という手法や、有料ストリーミング放送などが新たな販売方法として認知されていくのかもしれない。

■終わりに

 さて、たかがAVでもそれなりの手順を踏んでいることを理解していただけただろうか?女性の裸を扱うという以上、世間からは絶対に白い目で見られてしまう業種なのだが、真面目にやろうとすれば、本当に普通のビジネス論に行き着いてしまう。

「より良い商品をより安く」

 無駄な経費(人件費や出演料、プレス代など)を省いて、その分価格を抑える。1ルートあたりの売り上げ金額が落ちる分、ネットやレンタルやセルなど、思いつく限りのルートに同じ素材から作った商品を流通させて稼ぐ。(ネット版とレンタル版とセル店版で微妙に内容を変えたり、おまけが付く付かないなどが主な方法。)

「誠実な商売を」

 ショップに対してもスタッフに対しても、狭い世界なのでなるべく悪評が立つようなやり方は控える。またこれだけメーカーが多く飽和状態な現状を考えると、ユーザーが自社の作品、シリーズを信頼して買い続けてくれるよう、価格やクオリティ面に気を配る。

「効果的な宣伝、営業を」

 各メーカーが月に何十タイトルも発売するわけだから、その作品群に埋もれてしまわないような策が必要となる。これは企画自体のキャッチーさや、購買層へ向けた的確な宣伝、販売店へのアプローチなどの要素が揃ってはじめて結果に出るものだ。どれだけ熱のある人材を確保できるか、どれだけプロジェクトチームが一丸となれるかが肝になるだろう。

■結局、エロだからといって侮ると、絶対に成功しないということです。(今日の結論)

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荒井禎雄
[HP]:おはら汁
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