Folio vol.5 mystery
illust:いくら。
僕らのスケルトン・イン・ザ・クローゼット
岡沢秋
 忘れ去られた埃っぽい、小さなしゃれこうべ――其処にあることさえ忘れられてしまった「小さな秘密」。
 どんな幸せな家庭にも一つ、
 明るみに出たときすべてが始まり、小さな切っ掛けが大きな悲劇を生み、あるいは複数の人間の、人生そのものを大きく変えてしまう。
 クローゼットに隠された骨は、誰の家にも、誰のクローゼットの中にも在る。

 サスペンスとミステリーの違いとは、何だろう?
 …と、いう疑問は、おそらく多くの人が持っているものだと思う。

 殺人・スプラッタが大いに登場するのが「サスペンス」。
 UFOやら宇宙人やらが扱われるのが「ミステリー」。

 なんて分けてしまうと、世の中の大半は言葉の使い方を間違えていることになる。

 奥様方が「キャー、怖い。でも見たーい」なんてノリで見る番組が「火曜サスペンス」、「ミステリー特集」と称される番組で取り上げられるのがシャーロック・ホームズだったとしても、何ら違和感がないのだから。

 ミステリーという言葉には「不思議」という意味もあるが「謎」という意味もある。
 探偵が取り上げられる時のミステリーは、「謎」という意味で使われているのだろう。

 とかく、定義について語るのは面倒なので置いておこう。(きっと誰かが定義づけてくれるさ!)
 概して「”ミステリー”という言葉は推理小説に付くことが多い」ということくらいは、一般に認められることと思う。
 ミステリーというからには「謎」が無くてはならない。

 謎とは何か?
 たとえば密室殺人だったり、不可能犯罪だったり、一見有り得ないことのようだが人為的工作と思われたりするもの。もちろん実際に犯罪が行われているの だから、密室は本当の密室ではないし、不可能に思えるだけで不可能なことではない。
 また、工作は、仕掛けがわからなくても確かに存在したはずだ。
 「ミステリー」で言うところの謎とは、犯罪を行った「手段」のことを指す…のが、大雑把な前提だと思う。

 そういった「謎」を、いかにも不思議に見せかけて盛り上げ、なおかつ個性豊かな探偵に解かせてゆく。こういうものが「ミステリー」なのではないかと思う。
 と、いうことは、…犯人は、とかく謎を練り上げ、複雑怪奇なトリックを仕掛けなくてはならない。
 痴情のもつれで衝動的に人を殴り殺し、慌てて偽装工作をしたら、ちょっと巧くいっちゃった、みたいな、二時間ドラマ的ストーリーは、「ミステリー」と呼びづらいのである。
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