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開会までの道のり 〜それは不安との闘い〜

 会場である、鳳明館森川別館は、東大のすぐ近くにありました。まずは最寄り駅に同行するヤマグチと待ち合わせて、会場へ直行。

 私たちは二人とも、日頃からミステリーを愛読しているとは言え、ミステリーマニアを自称できるほどには読了していないというヘタレっぷり。なにせヤマグチは年間250册を読了するパワー型とは言えミステリーを読み始めてからまだ1年半ほど。私は自慢じゃないが「一度読んだ叙述トリックを忘れて新鮮な気持ちで再読できるのはこの世にことこさんぐらいしかいない」と言われるほどの記憶容量の持ち主。
 ふたりのミステリー力(略してMP)を足して10だとしたら、平均MP30ぐらいの猛者どものウヨウヨしている場所に足を踏み入れようとしているのです。不安にならないはずがない。

玄関画像 「これじゃない?」
「これっぽいですね」

 玄関に「MYSCON様」って書いてあるよ!!なにはともあれ、会場に足を踏み入れてみました。

 会場である鳳明館森川別館は、純和風。たたずまいからしてミステリーしています。これは予想以上に素敵だ。受付の眼鏡のお姉さん美人だ(関係ない)。一気に高まるボルテージ。

「あの、Folioの者なんですが…」と思いきって言ってみると、怪訝な顔。わあわあわあ。と思った時に、代表であるフクさん登場。

「お待ちしてましたーどうぞ、とりあえず、お部屋へ」

 通されたお部屋もこれまた和風。昔懐かしい旅館の香りがします。イイ。イイねえ。通された部屋は、いわゆる「寝部屋」。イベントは一晩中開催され続けるのですが、体力的に限界の来た人は、自分の判断で割り当てられた寝部屋にもどって睡眠を取るのです。(もちろん男部屋と女部屋は別)

とりあえず、お茶煎れて一服。

しーん。

静かです。隣の女子部屋にはなんだか女子が集まって来ていて楽し気な声が聞こえてくるのに、私がいる部屋には誰も来ない。漏れ聞こえる声に耳をそばだててみると、どうやら過去に参加している同士で再会を祝っているようです。

さ、さみしい。

しばらくしたら、やっと一人、やはり初参加だという方がいらしたので、お茶などいれて歓待。ドキドキですねー。と話し合いながら、開会を待ちます。

怒濤のスタート 〜気付いたら満面の笑みだった〜

午後17時半。一同大広間に介していよいよ開会です。部屋には参加者がぞくぞくと集まっています。
集まっている人の層は、予想以上に年齢高め。といっても20代30代の方が中心なのですが。上はおそらく40代、同行したヤマグチ(10代)が最年少クラスでした。女性は予想通り少なめ。80人中10人くらいだったのじゃないかと思います。

まだ怯えている私達は、部屋のすみっこのほうで「連続殺人が起きてもおかしくないですね」「むしろ起きるべきたたずまい」「最初のガイシャはあのちょっと派手な感じの女の人ですね」「間違いない」などとボソボソ囁きあいながら開会を待ちます。ガイシャは〜じゃねーよ。

諸注意などを聞いて、いよいよ開始です。まずは高田崇史さんのインタビューから。日頃お顔の写真を公開されていない高田さん。壇上に高田さんが現れるなり、アドレナリンが排出されるのを感じました。感じちゃいました。

もう、これが、いきなり面白い。面白い部分はおうおうにして公式には発表できなかったりするので割愛していますが。メフィスト賞の副賞の行方などなど。気付いた時には声をあげて笑っていました。なーんかポカポカしてきたぞー!

そしてそのままの勢いで、全体企画へ。途中休憩をはさんでいたので、私はそのすきに代表者にインタビュー。ちょっとは取材っぽいこともしなくてはいけないのです。

ここでちょっと全体企画の御説明。参加するまで、全体企画ってなんじゃらホイと思っていたのです。
全体企画とは、文字通り全員で参加する企画です。参加者全員を(参加している作家の方も含めて)10人ほどの班にわけ、班ごとに発表する形で行われます。
何を発表するかはその年ごと。今年は「MYSCONに来ると○○が儲かる」というお題でした。

1)MYSCONに来ると、ミステリーが嫌いになる
  ↓
2)ミステリーが嫌いになると、旅に出たくなる
  ↓
3)旅に出るなら黒いトランク
  ↓
4)黒いトランク…?!鮎川哲也だ!
  ↓
5)ミステリーが儲かる

というような形で、MYSCONに来ると、で始まってどこか(誰か)が儲かるようにオチと途中を考える、というもの。

一人できていても、ここで班の人たちとワイワイ話し合うことができれば、一挙に不安は消し飛ぶはずです。
全体企画 この発表でもう爆笑。この例題でも、鮎川哲也を知らない人には「黒いトランク→鮎川哲也」という流れがわからないかと思うのですが、そういう「知っていないとわからない」ネタが惜し気もなく!なんの遠慮もなしに!

わかる人にしかわからないネタ、というのは、ニッチが狭い分だけヒットした時には受ける、という典型の空間だったように思います。マニアックであればあるほどにネタは濃く凝縮されていくのです!

そして忘れてはいけないのが、発表した演者たちが芸達者だ、ということ。ミスオタなんてどうせグジグジとボソボソと喋ってて眼鏡とかクイクイあげちゃって…なんて偏見を持っていませんか!私は持ってた!申し訳ない!とんでもないですよ。ちゃんと、舞台上のオンオフを使い分ける、下手に恥ずかしがったりしない、素晴らしいものでした。

もうこの頃には私はこの空間にメロメロ。はやくもヤマグチ相手に「なにこれ!なにこれ!面白いんだけど!ちょっと!」と大興奮していたのでした。

個別企画 〜各々の求める場所へ〜

個別企画は、各部屋で。同時進行で行われます。この写真は、大広間のもの。 大広間の様子

・海外ミステリー企画 「短編と短編集」
・読書会 島田荘司『ネジ式ザゼツキー』
・お薦めライトノベル・ミステリ10作品
・ミステリ読者今昔物語 「あの時ボクは若かった」

の4本が、個別企画。そのどれにも食指の動かない人のために、大広間が解放されていました。そこでお喋りに興じている人たちも沢山。
もちろん「最近の景気はどうすかー」「いやあ、明るくないねえ」なんて話しをしているのではありません。一人残らず、ミステリーの話をしています

私が参加したのは「読書会 島田荘司『ネジ式ザゼツキー』」。正直、メフィスト系全盛のいま、島田御大の位置というn…あ、すいません、このへんのことは読書会レポートに書いてます。

休憩時間 〜休憩ってなにを休憩しているの〜

寝部屋 さて、個別企画が終わる頃には、すっかりと夜もふけ、日付けがかわろうとしています。なのに寝部屋には当たり前のように誰もいません。いやしません。

そういえば、さっき代表のフクさんに
「日付けがかわる頃には大広間にいたほうがいいですよ」
という謎のアドバイスをもらった記憶が…。

さっそく大広間にむかってみます。わあ、いるよ。まだまだいるよ。それぞれが何かについて語っているのですが、とりあえず目についた熱い一団に近付いてみます。

個別企画でライトノベルのことを話していた人たちでした。まだ語り足りなかったのか。

えーなになに。ミステリーとライトノベルの相性について、ですか。さりげなく輪に入りますよ。 大広間2 まずはライトノベルの定義?ふむふむ。あーレーベルね。たしかにレーベルで判断するしかないかもしれませんね。で、ほうほう。ミステリーとして読める、というライトノベルはあっても、ミステリーであるライトノベルと言えるようなものが少ないのはなぜか。ははーまずはカテゴリーありきだったんじゃないでしょうかね。ライトノベル、売れるーウマー。ミステリーも売れるーウマーじゃあ融合させてみちゃえーってやってみたものの、ライトノベルを好む読者にはミステリーは毛色が違いすぎて、ミステリー読者にはライトノベルは軽すぎる、みたいな。結局どっちつかずってことですよね。ええ、ええ。ああ、萌え!なるほど、萌えの不足ですか。ミステリーは萌えと相性が悪い。なるほどねえ。女子萌えはあるんですけどねえ。え?ありますよ。だって京極にも御手洗にも萌えますよ。え?そんなの行間に書いてあります!問題は男子萌えなわけですね。ふーむなるほど。じゃあ、結論としてはドジッコ妹探偵(はわわー解決なのですー)ですね!

気付いたら一緒に白熱していました。

と、そこに謎の音楽が。これか。これがウワサのゲリラ企画なのか。

ゲリラ企画〜キミら一体何者だ!〜

わあ!なんか、いきなり小芝居が始まったー!!

おい!ヤマグチ!面白いぞ!これ!なんだ!これ!取材メモを取ることも忘れて、ひたすらアホ面さらして爆笑。たぶん、全体企画同様、こちらもミステリーをある程度以上の册数こなしていないとまったくわからない元ネタばかりで、心の底から「ミステリーを愛読してて良かった」と感じました。

それにしてもこの人たちは、さっきの全体企画の発表といい、全員演劇畑の子ども達かなんかなんだろうか。

喫煙室〜それはオアシス〜

買収するよ 忘れちゃいけないのが、喫煙室の存在。MYSCONは、基本的に全面禁煙なのです。大広間の話は、楽しいけど煙草が、煙草がぁぁぁ、とニコチン中毒の私はしょっちゅう喫煙室にいりびたっていました。そこに集うのは全員喫煙者。ああ、全然健康的な香りがしないわ、この人たち。どうしてかしら、居心地がいいわ、ここ。

実は、全体企画よりも先に、まずここで私は見知らぬ人との交流を持ったのでした。

しょっぱなから、お酒『謎』と『メフィスト』を持って満面の笑みの某氏。「お酒好きの高田さんは、もうこれで落としたも同然じゃー!」と叫びながらどこかへと立ち去って行きました。(あとで二人で晩酌しているのを目撃)

他にも、明け方近くのまったりとした時間に、某一般誌から過去に取材に来た記者というのが、まったくのミステリー音痴で、というお話を聞いたり。
「ミステリーの面白さはなんですか?」という質問に対して「たとえば島田荘司の『異邦の騎士』の…」と言ったら「その作品は面白いんですか?」と問い返してくる、という有り様だったとか。
わからない方のために書きますと、それは、巨人軍に取材にいって「長嶋さんて強かったんですか」と聞くいたようなものです。ちょっといくら畑が違うにしても不勉強がすぎますね!そんなの!(自分は違うとアピール)
でもまあ、その記者の人も辛かっただろうなあ、とか思いながら煙草をプカー。
(ちなみにその頃ヤマグチは、大広間で初対面の人相手にいきいきと乙一や萌えについて語っていたそうです(目撃者談))

煙草吸ってないと、頭まわんないンすよねー。なんて言いながら、まったりと閉会を迎えたのでした。

閉会宣言〜そして伝説に〜

本当に、アッという間の15時間弱。大広間に再度全員集合して、解散です。MYSCON代表のフクさんは、今回限りで代表を引退。次回からは、現スタッフのSHAKAさんが代表をされるそうです。

そして、引き継いだばかりのSHAKAさんのお約束の言葉で、MYSCON5は閉会、解散。楽しい時間をありがとうございました。

次回、MYSCON6でお会いしましょう!