本文目次など
one hundred years

編集後記

Folio 編集部

Questionnaire

「100年と聞いたら何を思い浮かべますか?」
いきなり聞かれても何も思い浮かばないよーというのが正直な答えかもしれない。目の前のことに追われて100年どころじゃなかったりね。一瞬頭を空白にするそんな質問。(ぱ)

100years

「100年」というテーマで小説を書いてもらいました。とらえどころのないテーマだからこそなのか、テーマの料理の仕方はそれぞれの個性的な作品が集まりました。(ぱ)

※「恐竜のまばたき」 茶石文緒

世紀を越えてそこに存在する鉄筋の建造物も、茶石さんの筆にかかればしなやかで優しい乙女になる。移ろいゆく町を見つめ続けるその視線の優しさと愛するものを守る強さが、穏やかな百年という時間とともに読む人の胸に染みこんでいく。(ぱ)

※「お大事に」 朝倉海人

風邪なんかひくと「お大事に」ってみんな言いますよね。怪我して骨を折っても、案外たやすく口にして通り過ぎる。「お大事に」って言葉は丁寧に見せかけながらかなり薄情な言葉なのかも知れないなと思った。そうそう。○○○○タイマーってよく言われますね。最近はテレビでも冷蔵庫でも数年で調子が悪くなるけど、僕が子供の頃なんかテレビなんて10年ぐらい余裕で持ってたような気がします。お大事に。(サ)

※「ランチはステーキ」 添野慎太郎

めくるめく混沌と混乱と繰り返しの中を猛スピードで疾走していく文章。ジェットコースターがプシュウと音をたてて止まった先はランチの乗ったテーブル席。どこでどの時代でどんな場面で生きていようが、わたしたちはランチを食べてセックスをする。(ぱ)

※「Rainy Days レイニー・デイズ」 岡沢秋

たとえば希代のメロディメーカーのポールがZEPの曲を作ったらどうだろうかとか関係ないけど考えてしまった。SFである。SFで猫と言えば、あの例の話を思い出すけど、このRainy Daysはまた違った味わいのする佳編である。たとえば僕らはここにいてあそこにはいない。あそこにはいないけど、ここにもいない。あそこにもここにもいて、そしてどこにでもいる。さてはて、ネタばれにならないように解説を書くのは至極困難である。(サ)

※「たいせつなもの」 高城令羽

ほほう。そういうオチですかと読了後に、ニヤニヤしてしまったのだが、読みやすい優しい文章に覆い隠されたちょっとブラックな部分がとても効いている。これはだれにもやがて来るかもわからない人生における事態を描いたものであると言えばいいのだろうか。いやそうでもなく、ふと高野文子の有名な漫画を思い出した。(サ)

※「男たちと人妻と犬と呪われた百年」 岩井とおる

「圧倒的にオリジナリティが欠如している。」という事実を突きつけられ、また周りの人間たちにも突きつけていく主人公。それだけでは飽き足らない主人公(もしくは作者)は、現実のコラージュとフィクションを織り交ぜ小説の世界を飛び出していく。(ぱ)

photo + novel

世界が話しかけているという表現は、YUKIさんの写真を見て思いつきました。日常の光景を、生き生きと切り取った写真の数々。ストーリーは写真から生まれました。(ぱ)

Poetry

100年というテーマで詩を書いて頂きました。読む人のもつれた心をそっとほどいて受けとめてくれるような静かで温かな言葉たち。(ぱ)

Bungaku Remix: one hundred years before

参加者には百年前の文学に対峙して刺激を受けてもらい、そして読者には百年前の文学に触れるきっかけになるといいなという企画。remixという言葉の解釈はいろいろですが。(ぱ)

※「レタスの墓」 歪

現代ではこんな純愛あり得ないんじゃないかと思っていた「野菊の墓」を見事に現代版に仕上げてくれました。(ぱ)

※「元日の青」 添野慎太郎

エロス、美への執着、サディズム。この三要素に真正面から対峙し現代版の刺青が生まれている。(ぱ)

※「二次創作」 石川

何を美とするかは人それぞれだ。血に塗れた妖怪に心底魅せられていく左京は確かに「清吉」である。(ぱ)

※「三夜叉」 寒竹泉美

視点を組み合わせ編み上げると物語の駕籠になる。視点、いや、人の感情だ。感情を編み上げると出来事になる。駕籠の中に出来事を入れて揺らすこと、それが物語なのではないかとも思う。感情を描くことで錯綜を描く。(サ)

※「夢十夜 Remix ミンナノユメ」 ふみを

原作の心はそのままで、装いを一心した夢十夜。夢心地の世界観に女の子の心情がくっきりと浮かびあがる。(ぱ)

※「悟り坊主はきれぎれ侍」 朝倉海人

こちらは研ぎ澄まされた静寂で迫力のある世界観はそのまま、原作とは違った解釈の夢を見せてくれる。(ぱ)

※「時効」 水屋ナヨキ

短いシーンの中に、原作へと遡って続いている過去とこれから続いていく物語の予感を内包した掌編。(ぱ)

※「英国にて」 cug

史実とフィクションが入り混じる夏目漱石が主人公の小説。どこかとぼけた飄々とした文章で、夏目漱石の愛すべき姿が描き出されている。(ぱ)

※「十六夜」 サイキカツミ

一葉の独特のリズムの織り成す世界観を現代版にアレンジしている。原作では淡々と世間の不条理に翻弄される主人公のキャラクターに一味加わった作品。(ぱ)

※「伯爵の子」 オカヤマ

読了後二重の意味にめまいを感じる。狩る/狩られる と 奪う/奪われる。その二つの層が重なり合いそしてまた一人の少年はその世界に没入して行くのだ。(サ)

Interview

2004年12月25日に初の単行本「しゃぼん」が発売された吉川トリコさんのインタビュー。トリコさんと絡む企画は、実はわたしが編集者になったときからずっと狙っていたのですが、今回ようやく実現。R-18文学賞受賞の話や、デビューしてからの様子など興味深い話がたくさん。本当はもっともっといろいろな話をしたのですが、本誌では載せきれなくて残念。トリコさんありがとうございました。これからの活躍がますます楽しみ。(ぱ)

Coffee break

アインシュタインが特殊相対性理論を打ち出したのは、ちょうど今から100年前の1905年なんだって。名前だけはよく耳にするこの有名な理論を、誕生百年記念を機にwasteさんの分かりやすい解説で覗いてみてはいかがでしょうか。100年後のサイエンスはいったいどんなふうになってるんだろう。わくわくする。(しない?)(ぱ)

Future world: one hundred years after

「100年後」というテーマでイラストを描いて頂きました。100年後の絵を描けって言われても、ロボットとか空飛ぶ車とか?? なんて考えていたわたしの貧困な発想をはるかに超越した未来が集まりました。ただもうぽかんと口を開けて想像力が広げられる楽しさにどっぷり浸からせて頂きました。(ぱ)

※「同じ空」 いくら。

100後はどんな空をしてるのだろう。僕たちがいま見ているこの空ではなく全く違う空なのだろうか。いや、ちがう。少女が祈る。(サ)

※「赤」 デス

この宇宙服の人はどこから繋がれてるのだろう? 赤い星の上に神の手が存在するのか。それとも星が荒れ地に変化してしまうまでの長い時間の意か。8ってなんだろう?(サ)

※「群集」 津守秋

わわ。色彩は明るいのに凄く怖いかも知れない。いや、どちらだろうか? コメントの<皆同じに同調した未来>というのは、果たして美しい未来か、それとも暗黒の未来だろうか。人は既に人であるのかそれとも……。考えさせられてしまいました。(サ)

※「ねじまき」 シオヒサ

100年後はどんな生活なんでしょうね。生き物でさえもネジが巻かれてる? それとも電気コードに繋がってる? 僕らはどんな服を着てどんな顔をしてるのだろう。(サ)

※「風の便り」 Key

荒寥とした未来の風景に純粋培養されたような子供たちが水際で鳩と戯れている。水面の下には魚影なのか人魚なのか。乾燥した砂漠のような色彩の情景は物語を思い浮かばせてくれる。Keyさんの絵は物語に溢れている。(サ)

※「雨の時代」 シャイケ

僕はヘソがすごく気になりました。ヘソ出しは100年以上の寿命なのか。などというのはアレで、楼閣のような建造物がとても雰囲気あると思います。地球はこのままの姿で100年を保つ訳はないと思ったりしますが、悪い予想は当たらない方がいいなあと思います。(サ)

※「交信」 アキ

ファンタジックなファンタジックに。そういや子供の頃に見た未来の絵っていうのは、空中をチューブに入った列車が走ってたり、人が変わった乗り物に乗っていて見ていて楽しい情景でした。ふとそんなことを思い出しました。

※「100年後のトイレで耽る」 basil

あはは。「そのボディで〜」と書いた雑誌が非常にリアルな感じがして楽しい。そうそう、トイレで雑誌とか読み始めると気が付くと凄い時間すわってたりしますよね。でも100年って長すぎやしないか。スリッパに注目。(サ)

※「ひと枝」 チェリーちゃん

ああ、枝の先に注目。じっと見て頂ければこんなコメントなんか必要ない。ありがとう。(サ)

※「錯綜」 アニュウリズム

はっとたたずんで、宇宙に引き込まれて行くような感じを受けた。電車や街はそこにあるのだけど、あれ? まるで夢の中のように、そして言葉では言い表せない感情の中に。(サ)

from Editor

■遠くが見渡せるようなテーマにしようというサイキさんの提案を受けて、今回のテーマは「100年」にしてみました。届きそうで届かない百年という時間。長いような短いような、頑張れば(!?)生きられそうで生きられないような。8号では、いろいろな百年を集めてみました。
参加して頂いた皆様本当にありがとうございました。そして、Folioを訪れてくれた皆様ありがとうございました。
「今」を紡いだ百年前に敬意を。「今」から広がっていく百年後に希望を。敬意と希望の間でわたしたちの百年を生きる。(ぱそ子)

■お久しぶりです、ウェブ製作担当の徳保隆夫です。今回は始動が遅かった割にスムーズに仕事が進み、私の作業は前回と比較して格段に楽でした。次回もこんな調子でいきたいですね。今回はデザイン担当のししまるさんがお休みで、完成図を久々に編集長のサイキさんが作成しました。モノクロでシンプルな感じになったのは、多分そのため。私の仕事は、なるべく完成図通りのウェブサイトを構築すること。ほんの少しの妥協はありますが、概ね編集長の提示した通りのデザインになりました。何かお気づきのことがあれば、ぜひ表紙のメールフォームからご意見ください。よろしくお願いします!(徳保)

■今回は個人的に多忙でほとんどの作業をぱそ子さんにお願いしてしまいました。彼女が動いてくれなかったら全く完成できませんでした。また急なお願いにも関わらずイラストの方々、リミックス!なんてちゃんと集まるのかなんて心配してたのですが、執筆してくださる方が思いのほか居てくださって感謝の気持ちでいっぱいです。その他、色々と協力してくださった方々も参加してくださった方々も本当にありがとうございました。
またいつもデザインやってくれていた、ししまる君が多忙で動けなかったので、急遽デザインを僕の方でやらせて貰いました。デザインといってもだいたいこんな感じでと、徳保さんに投げちゃったのですがw 徳保さんはとても綺麗に作ってくださいました。ありがとうございました。
やはりひとつの課題だったのがリミックス企画でして、この企画は二つ意図があり、ひとつは参加者や読者の方に昔の丁度100年前にあった小説を読み直して、今の時代から考えてみるのはどうだろうか、という提案でした。もうひとつは、現在ある、いわゆる「文学」の形が出来上がったのは丁度100年ぐらい前なのではないか、それは文芸だけではなく僕らが今住んでる社会だったりするものの一端がその100年前から始まってるのではないかとも思ったりするので、それをもう一度考えてみようという企画でした。集まった原稿を拝見させて頂くと、それぞれの方がそれぞれ知恵を絞って面白いものが集まったのではないかとも思います。
なにはともあれ発行できてよかった。<今回は無理かと思った。
ありがとう。(個人的なことですが今号の自分の文章をMMに捧げる。)(サイキ)

次回予告

次回のテーマは out of... です。[fin]

サイキカツミ
WRITER サイキカツミ
新5000円札の顔が怖くてたまりません。余りにも怖いので5000円が手に入ったらさっさと崩してしまいます。お金ってどうやったら溜まるものでしょうか?
URL:ぞうはな
ぱそ子
WRITER ぱそ子
何のビジョンもなく始めた「100年」だったけど(おい)、やればなんとかなるもんだ!
URL:作家のたまご
徳保隆夫
WRITER 徳保隆夫
今年はネット離れして、仕事をもうちょっとまじめに頑張りたいです。入社以来、ちょっとサボりすぎてました。
URL:趣味のWebデザイン

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