「見る」から「描く」へ
佐藤康司×津守秋×たたらみよこ
■人の絵を見る
- 佐藤
- 佐藤です。こんばんは。
- サイキ
- はじめましての方、はじめまして。サイキです。進行をやらせていただきます。
- シュウ
- 津守秋です、こんばんわよろしくお願いします。
- たたら
- よろしくお願いします。たたらみよこです。
- サイキ
- いきなりですが、今回「見る」という企画で集まって頂いたのですが、どんな作家がそれぞれお好きですか
- シュウ
- どなたでも見るのは好きです
- たたら
- 絵本作家が多いですけど、日本画家や、浮世絵作家も好きなの多いです。
- 佐藤
- 好きなのはまじめに描いてるヒトなら誰でも。ヒトの絵を見るって、自分が絵描いてるから〜で、趣味で楽しみで見たいとかは思わないかな。エンターテイメントとして美術館で1300円払うより、他のことした方がイイかもとは思うが。純粋に楽しみだけで見るとかは想像つかないけど。
- たたら
- 1300円は勇気いりますね、相当好きでないと行かないかなぁ。私は土台が絵本や漫画だから楽しみ多いかなー。けど、絵を描こうとかって思ってからは見方があきらかに変わったけど
- シュウ
- そうですね、なんとなく自分と比較して見てしまう事が多いかもしれないですね。
■漫画
- 佐藤
- まじめに絵を描こうと思ったのっていつ頃ですか
- シュウ
- 今年になってからかなぁ…。ずっとダラダラと漫画イラストを描いていて、それでウダウダしていたのですが、最近大分まじめに描きたいと思い始めました。
- たたら
- 思い立ったのは高校くらいで。漫画家めざしてました(笑 中学で挫折。話が描けないのと、友達がめちゃくちゃうまかったってところであきらめついたけど、最近また描きたくなりましたね。
- シュウ
- 友達が上手いと、なんだかやめようって思っちゃいますよね。一時的なものだけど、なんかこの人に任せようって。
- 佐藤
- マンガかー。日本で絵描いてる人はみんなマンガは通るだろーな
- たたら
- あと、やばい漫画とか出会ってしまったりとか。松本大洋には当時ぐわーっとやられました。
- シュウ
- あの方は新鮮な方ですね
- 佐藤
- それって、自分が描きたかったのをやられたみたいな感じ?それとも完全に思いもよらないみたいな。
- たたら
- 前者です。
- サイキ
- 松本太洋の絵って独特ですよね。また、ストーリーも。
- たたら
- 絵もびくっりですが、そう。お話もすごいですよね。
- サイキ
- 絵本に通じるものあるように思います?
- たたら
- あー言われてみると通じるものありますね。絵本とかは置いといて、あの人の漫画って映画的だなーと。コマわりとかもそうだし、一コマ一コマの中の絵もそうだし。流れる空気みたいなのもあって。
- 佐藤
- 秋さんは松本太洋どう思いますか?
- シュウ
- ううん、個人的には別に興味ないんですが、なんかそういう流れが出来た凄い人だなぁって。ドンドン上手くなるし、挑戦的で素敵だと思います僕は、山岸凉子さんが好きなんですが、それは雰囲気とかでしょうか。彼女の変化を見ているのが何故か凄く好きなんですが。精神的になんかこう、若い感情が渦巻いているのに、その当時衝撃で、その後、ドンドン落ち着いて行くのが面白くて。
- たたら
- 少女漫画って抵抗あってダメだったんですが、読めましたねアレは。こうゆーの少女漫画でアリなんだって思いましたねー。
- シュウ
- 日出処の天子は、中々衝撃的でした。びっくりしました。
- サイキ
- たたらさんはどっちかというと少年漫画?
- たたら
- 男兄弟にかこまれて育ったもんで、自然にソッチの方向でしたね。子供の頃は少年ジャンプ系を。あ、そのまえに藤子不二夫や水木しげるをよく読みました。
- サイキ
- ぜんぜん今の絵柄と違ってますよね。
- たたら
- わはは。よく好きな作家ならべていくと、どうしてこんな絵になるのかと言われますね。
- シュウ
- あはは
- 佐藤
- 絵本てのはどの辺りから
- たたら
- 記憶のある限りですと幼稚園のころからで、幼稚園の裏に図書館があって通いつめてたんですよ>絵本
- シュウ
- 漫画より前なんですね
- 佐藤
- その後、絵本とマンガは平行して読んでたんですか
- たたら
- 絵本は小学校中学年ころから漫画と平行しだして、高学年の頃には漫画にすりかわって、しばらく空きましたね。働くようになってから絵本にまたはまりだしました。
- シュウ
- 絵本に対する意識って大分違うもんですか?
- たたら
- んーーーそんなないですよ。ただ、頭よわいので、文が短くて、わかりやすくて、絵がダイレクトであったりとか。入ってきやすいってのはあります。あと、小説よめないんですよ。考え事とか、妄想に走って先に進めないんですよ。
- シュウ
- あはは、僕もそれあるかもw
- 佐藤
- 見るという行為を介したメディアじゃないと駄目なんでしょうね。
- たたら
- そうですそうです。正にそれですねー!
- シュウ
- 佐藤さんはどんな変遷を?
- 佐藤
- やっぱ藤子Fですねー。自分も。藤子Fの絵が、絵のスタンダードになってる。
- たたら
- 私もF派です!
- 佐藤
- 普通Fですよね。
Aは阪神みたいなもんで。
- シュウ
- ええええええええええええ
- 佐藤
- なんすか!!!
- シュウ
- 阪神…なのか。いやいや、僕関西人なのでつい。
- たたら
- あははw
■見えないもの見えるもの、そして描くこと
- たたら
- お題に反して今、見えないものに興味あるんですよねー。お化けとかってより、見えない力とか。霊っていうより、神がかり的なこととか、業(ごうが深いのごう)とか。
- 佐藤
- どんなんですか? なんか見えるんですか
- たたら
- 私はまったくみえないですよ。勝手な妄想ですけど、台風の被害とか、地震だとか酷いところあるじゃないですか。あーゆーの見てて、またここかぁってとこもあれば、地震とか起きても被害全然少ないとことかって妙に気になりません?
- 佐藤
- 地霊のしわざ…!!
- サイキ
- 場所には場所のいわれなどがありますよね。
- シュウ
- 僕がよく考えるのは、見えない空気感とか、雰囲気自体を描写したいっていう事です。流れとか淀みとか、それを形状にして画面に乗せたいっていうか。
- たたら
- そうゆうのありますねー。けど難しいです。
- シュウ
- うん、凄く難しくて…。環境や経験ですぐに絵って変化してしまいますよね、それって見た結果なのかなぁ。
- 佐藤
- 一般的に、絵を描くのは、まず「見る」ことですよね。どう意識して見たのかの記録が絵で。とはいえ、視覚、だけを表現してるわけでない。対象を把握するための一部ですね、見るっていうのは。見たり聞いたり触ったりしながら描いてるわけで、それは音楽聴いてるときでも聴覚という感覚器官だけで感じてるわけでない。とりあえずの入り口なんだろう。
- サイキ
- とりあえずの入り口。。。
- シュウ
- きっかけ的なようなものに見えて、行き着く所は絞り込まれるような気もするけど。
- 佐藤
- リンゴを描くとき、りんごを食べたことある人と食べたこと無い人じゃ違う絵かくだろうみたいな。
- シュウ
- おお、そうか、そうだね。きっと違う絵になる。見る、だけで出来た描写とそうじゃないのは違うよね。でも、見るだけで描いた絵には、なんかまた違ったものが生まれるのかな。
- サイキ
- 見るだけでというと?
- シュウ
- つまりは、SEXをエロビ見ただけとやって描くのとは違うって事ですよね。見ただけで描くと、とても幻想的になるだろうし。その結果の経験が複雑に組合わさったのが「個人」って事なのかな。
■見ること認識すること
- 佐藤
- 「見る/描く」って、個人が対象や状況をどう認識するかってことなんかな。
- シュウ
- 何のどこを集中的に見て触っているかとか、そういうのが皆違って、個人の違いが生まれるのかなぁ。って考えると、見るって、とても偏差的なんだなって思ったんですが。
- 佐藤
- ぼやーっとした写真とか見て、何がなんだかわかんなくても、ここに顔があってーって言われたら解るみたいな。そうとしか見えなくなる。
- シュウ
- ある!
- 佐藤
- そういうのはあるけど、実際に脳みそもそういう作業をしてるらしい。単なる光を感知するだけじゃなくて、形として認識する作業。見て、そこに意味を与え、形として認識するという。
- シュウ
- 刷り込みってやつなのでしょうか。それでインプットされてしまうと抜け出しにくくなるのかな。
- サイキ
- 認識したものを、実際に紙やデータに起こすときには、また別の力が必要ですよね。
- シュウ
- その段階でもうきっと変化しちゃってるんだと思います。見たものた触れたものに、違うフィルターがかかって。
- 佐藤
- それは脳の視覚認識についてで、そこから個人が絵を描くということになると、ちょっと飛んじゃうけど。
- シュウ
- うん、別の行為かもしれないですね。入力と出力って事でしょうか。見るっていうのも、視力の問題とかもあるし。ぼんやりしか見えない人とかもいるし、色弱の人も入るし。その入るのと出すのの間を取って、絵って出来て行くんでしょうか。描きながら常に自分で見るわけだし、見る、を除外する事もできないので。
- サイキ
- 間というか、相互干渉のような力が存在してるような気もするのですが。脳の視覚認識と実際に絵を描くという作業との間には何か転換のようなことがあるんじゃないかなと。
- シュウ
- そうですね、強制的に持って行くような絵もあるしなぁ。ううん、むずかしい!!! ああ、湧いて来ました。例えば、今僕はこうしてメッセしているんですが、頭の中では皆の顔とか雰囲気とかを想像しています
- シュウ
- 絵にもそういう作用が働くから、どんどん色々付着して行って、それできっと純粋に見たものとか、そういうのからはズレて行ったりするし。
- 佐藤
- 何か転換のようなこと。それの総合的なのが「伝統的な絵の描き方」なんだと思う。
- サイキ
- 「伝統的な絵の描き方」?
- シュウ
- 根本的な、絵、っていう事ですよね、きっと。
- 佐藤
- 光と陰として、アウトラインとして、見る、見える、という判断をしてる。判断の仕方、認識の仕方によって、西洋の画法だったり東洋の線描だったり。認識方法の違い。そうでない絵なんて誰もみたことない。そういうのを描けたらエライ画家になれるんじゃないすか。
- サイキ
- なるほど。
- 佐藤
- でもそういう視覚的な認識方法を画家が考えるんでも無くなってるから……。
- シュウ
- 目の造りの違いとかなんか、どこかで見ました。西洋人は奥まってるからどうとかこうとか。なんか人間の思考以外にも色々作用していて難しい。
- たたら
- 「見る」って壮大なテーマだぁ。
■どういう絵を描きたいか
- サイキ
- どういう絵を描きたいですか?
- シュウ
- ううん、なんかそこにその人が居るような…とか…。誰かが見たときに、その絵と色々話をしてくれるような、そんなのが描けるといいなぁとか思うけどなかなか。
- 佐藤
- 具体的なイメージとしてのこういう絵ってのは無いけど、気をつけてるのはウソつかないこと。
- たたら
- 私はウソばっかかなー(笑
何が描きたいとかすらあんまりはっきりしてないんですけど、異次元とか、桃源郷みたいな、パラレルワールドみたいなものを描きたいですね。見えないものにつながってたりもするんですが。
- サイキ
- 「嘘をつかないこと」ってどういう部分です?いわゆる「リアル」ということとは別ですよね。
- 佐藤
- 自分の感覚とか気持ちに対して〜です。
小説でも「自分の言葉じゃない言葉」使うわけいかんでしょ。最初言ったウソつかないってそういうことで、パッションといっちゃうと又違うけど。
- シュウ
- そういうパッションみたいなの、僕も好きかもしれない
- サイキ
- なるほど。感覚や気持ち/パッションと絵は重なってきますか?
- シュウ
- 当然重なります。そこが主っていうくらいかもしれない。
- 佐藤
- うん。
- たたら
- あんまり意識してないとこですが重なりますね。
- サイキ
- 小説の場合、感覚やパッションを中心に置くと、話にならない。まったく逆の力が必要なので、感覚やパッションをひっくり返したり、転換させたりすることがよくあったりするので、そう聞いたんです。。
- シュウ
- あ、絵も突っ走ると意味不明になるから、そこは共通する所もあるのかと思います理性みたいなのが出て来て、押さえ込まれたりする事も有るし。
- サイキ
- あ、それは同じか。
- シュウ
- でもきっと、みんなそれをひっくり返すって言うより、それが重なる一点を目指してるんじゃ無いかなぁって思うんです。
- サイキ
- なるほど。それは言えてるかも知れない。佐藤さんや秋さんは大胆にそれを中心化させた絵を描くし、たたらさんは、ぽんっと浮遊したような絵を描きますよね。浮遊?飛翔?
- たたら
- 最近こどもに「今ぼんやりしてたでしょう!」っておこられるくらい、常に浮遊してるのかもしれません。ぼんやりしてるつもりなかったのに聞いたら「よくぼんやりしてる」って言われてすごいショックうけました。まぁ妄想壁があるんです。その妄想はだいたい絵のためのものですけど。
- シュウ
- 僕の場合は、精神的なはけ口のような感じでしょうか、人のために描いているのでは無いので。なにかのお仕事なら考えて描きますが。
- たたら
- 自分も人のために描いてないですねー。
■なぜ描くのか
- サイキ
- なんで描くんでしょう?
- シュウ
- ここで解放されるっていうか。そんな感じでしょうか。
- たたら
- 私も、今特に子育てやなんやらで規制が多いなかで、絵ぐらいしか解放される場ってないだけに、よりどころになってますね
- シュウ
- 何か食べたら出るので、それみたいに、色々入って来て出て行くような。
- サイキ
- なるほど。佐藤さんは?
- 佐藤
- 考えるんだけど、何で生きてるのかとか大仰な話しになりそうで。きっと、おなかが空いたから、とか、そういうんです。
- シュウ
- 空腹時って凄いですよね。
- たたら
- 不思議な行為ですよね。原始人のころから描いてたんだもんなー。
- 佐藤
- 一番手っ取り早いから。いちばんダイレクトな感じがする>絵描く
- たたら
- あー文字がなくてもつたえられる。あー私、別に絵に深い意味こめて描いてるわけじゃないですけど。それ以外の伝達手段って苦手というか、まるっきりだめで、描くしかないってところです。自分のことわけわかってなくても、とりあえず、わけわかってない絵が描けるし。
- 佐藤
- 描くことで解る。
- たたら
- そそそそです!
- シュウ
- うん、見る側には絵に込められたものは関係なくなっちゃうし。後で見たりして、色々考えたりしますよね。
- たたら
- 子供うむ前と産んだ後の絵がほんとに変わった。
- 佐藤
- それ聞きたかった。どう変わったんですか。
- たたら
- まず子供を自然に描くようになったこと(今まで描きたいと思わなかった)。人からいわせるとやわらかくなったって言われます。子供できる前はわりと、オカルトっぽかったり、すこし残虐な絵とか、エロイ絵とか描いてました。まず、今まで描きたいのに描けなかった時期が長かったんですが、子供産んでからすっごい描けるんですよ。とりつかれたように。しかもさわやかで、子供や動物ばっかり。
- シュウ
- それは凄いかも
- 佐藤
- その時々で自分にとって何が重要かって事なんでしょうかね、今はエロより子ども
- たたら
- そうですね、母性本能でまくりってゆーか、それだけで絵描いてるのかなぁなんて思ったこともありました。
- シュウ
- 自分でどっちがいいとか(変わる前と後)ありますか?
- たたら
- んーーー。どっちも好きですよ。
どっちも自分だなーって。子供の影響に導かれて、絵本のベースがでてきたって思いましたね。
- シュウ
- うんうん
- サイキ
- 秋さんと佐藤さんはがらっと変わってしまった時っていうのはあります?
- 佐藤
- 無いですね多分。
- シュウ
- ううん、自分では判断できない問題かもしれない。自分では結構変わり続けてる気で入るのですが。絵柄が変わっても雰囲気は変わらないっていう感じでしょうか。
- たたら
- 出産ほど強烈な出来事、心身の変化はないと思います。
- シュウ
- うんうん、男にはそういうのは中々無い事だと思う。よほど凄い体験とかしたら変わるのかなぁ。そういう変化を経験してみたいなあって思いますねw
- 佐藤
- 出産体験を絵に描こうとかは思わないんですか。
- たたら
- あーないですねー。つらいばっかりってゆーのもありますが、結局、生んだ後、子供のかわいさに負けますねー。けど、描いたら面白いかもしれないですね。想像しだしたらなんか楽しい絵が描けそうな気がしてきました。
■今後の目標
- サイキ
- 今後の目標を。ひとことずつ。
- シュウ
- 協調性みたいなものを身に付けて行く事と、変わり続ける事。
- 佐藤
- 絵の仕事する。
金銭化する仕事。
- シュウ
- うう、僕もそれも頑張らないと…。
- たたら
- 頭の中のイメージを紙や画面の上にちゃんと表現できたらなと思います
- サイキ
- ありがとうございましたー。(041027)