東京ゲームショウが今年も開催されました。去年は体調不良のため行くことが出来ず、今年は仕事の都合上行けないなぁと思ってましたら、かつて通っていたゲーム専門学校の師から連絡が入り。
「お前、今年のゲームショウどうする? 来るか? つーか来い」
……そういうわけで半ば強制的にゲームショウに行ってきたので、ついでだから1プレイヤーとして、ゲームについて思うこととか書こうと思うのでありました。
何はともあれ会場を歩いていかないと何があるかわからないというわけで公式パンフレット片手に会場をうろついて見ます。ちなみに一緒に回るのはかつての師と専門時代の仲間、現在はゲーム業界第一線でバリバリやってるクリエイター連中です。
っていうか、なんでこの面子でプレス日じゃなくて一般日にこなきゃ行けなったんですかね、わが師よ?
「そりゃ、お前、休みあわなかったからしょうがねぇよ」
いや、そりゃ解かるんですけどね、やっぱり一般日人多いじゃないですか。特に俺の嫌いなヲタとか。
「蹴り飛ばすか、投げ飛ばせ」
それアンタの得意技やんけ。
「それにしてもなんだ? 今年のゲームショウはずいぶんこじんまりしてるなぁ、コナミブースがこんなに小さいとは」
……わが師よ、ここは物販ブースですよ! 比較的素で間違えているあたりマジで大丈夫かな、この一行とか思いながらいざ出発。
会場を回り始めて約1時間。一通りどこに何があるかがわかり、通路で休憩。話をしていて全員一致の意見が「つまらない」でした。
これは本当に正直な感想で、ある程度何かが出品されるということが事前にわかっているのでどのブースが何を目玉に売っているのかが解かってしまっているという驚きが無い事が原因の1つ。
他に原因を挙げるとするなら、目玉がわかっているから、それをやりたいヘビーユーザーのみが体験コーナーに行列を作り、他のライトユーザーはほとんど排他されている流れを生み出しているということ。
歩いて回ってみると良くわかるけれど、人の流れが非常に悪いんだよなあ。
少なくてもこれはゲームの展示会ではないんじゃないか、と。
ゲームショウの悪い点は展示会としては中途半端なポジションにいることで。
そのお陰で色々と悪い点などが見つけやすいんだけど。代表すべき改善されない点の1つにブースの作り方と見せ方が悪いと言うのがあって。
いわゆる目玉を前面に押し出して、あとは力任せのゴリ押しで誤魔化すといった、人の流れを無視した不親切設計をするものだから、人が溜まりやすく、結果、人が流れない。体験ブースのすぐ後ろが通路なのにも関わらず行列が出来てるブースなんて山ほどあるし。毎年やっていてわかっていると思うんだけどなあ。
前述の企業がモノを見せるためにブースを作るのが「見せる」行為であるとするんだったら、実際に手に触れさせて体験させるのが「魅せる」行為の1つだと思うんだけど、残念なことに今年もこれをあまり重要視していない企業が目立った気がして。
ゲームショウは展示会なのだから実際に体験してナンボのはずなのに、来場者に合わせた台数が確保できてないんだよね。需要と供給のアンバランスが目立つ悪環境になっていて。
これは東京ゲームショウ自体が例えば東京モーターショウの様な面積の広さではない為、ある程度は仕方ないと思うけれど、やはりゲームは触れてこそ、だとも思うんだよなあ。
見た中で一番最悪だったのが体験待ちに120分という行列! 東京ディズニーランドかディズニーシーかと疑いたくなるような待ち時間を平気で設定する企業にはただ呆れるばかりだったけれど、それに並ぶヘビーユーザーにも呆れるの一言。ちょっとは怒れ、と。
この2点の「みせる」という行為を模範のように毎年実践してくれる数少ない企業がソニー・コンピュータエンタテインメント(以下、SCE)とセガだったりするわけで。
この2つの企業に注目していきながら、話を進めて行きたいと思います。
まず、SCEブース。全体的に開放的な作りでブース中央に今冬、発売予定の携帯用ハードウェア、PSPコーナーを作り、時間制限を細かく設けてお客の流れをスムーズにしているという点がポイント。
体験コーナーとは別にPSPを持って歩くコンパニオンがいて並ばなくても触れることが出来るという親切さもナイス。
次にセガ。目玉商品を前面に押し出し、特設ステージなどで開設している間、その商品に興味のない人は、体験コーナーを自然に移動することができるという作りになっていて、これは人の流れとか、ターゲットユーザーとかしっかり考えているからこそできる芸当だな、と。
両社、共通するのはブースが広いということと、売りを明確化しているという点。
資本力がある会社ほど広いブースを持つことが出来るけれど、そこにコンセプトがなければただ単に商品を置く場になるだけっていうのをわかってるなと。その基本的なポイントをキッチリ実践しているところがあまりにも少ないんだよなと感じながら、両社の売りを見てみると。
セガは来年発売予定の「サクラ大戦X〜さらば愛しき人よ〜」を中心としたプレイステーション2(以下、PS2)と今後発売される新ハード、ニンテンドウDSとPSPにソフトを供給するぞという姿勢を見せ、SCEはPSPのみをこれでもかといった具合に前面に押し出す姿勢。
注目すべきはやはりPSPだけれど、実際に触って見た感じ、おそらく携帯用ハードウェアとしては最高性能を誇るだろうなというハイスペック。ただし、インターフェース関係はしっくりこないなぁというのも正直な感想。
テストプレイで「スタートボタンを押してください」という画面を見て、スタートボタンを押そうとしたらどこか解からなくて、ハードを5秒見てようやく発見できたという配置の悪さ。PS2からお馴染みの3Dスティックも何のためについているんだろうかと良くわからないほどしっくりこない。
あのボタン配置の悪さで「Lキーを押しながら方向キーを下にいれ、△ボタンを押してください」なんて必要性のあるゲームが登場したら、俺はきっと付いて行けないだろうな。これからゲームを始めるであろう人たちもそれが言えると思うけど。その前にそういう複雑なゲームを開発してしまうメーカーにも多少なりとも問題があるように思うけどね。
そしてPSPのターゲット層が見えない。大人向けなのか、子供向けなのか。子供が持つにしては少し大きいだろうし、価格もあのハイスペックでは子供が買うには若干高めといった感じ。じゃあ大人がやるのかというと、そういうようなラインナップが見えないし、買ったところで電車に乗って暇つぶしがてら片手間にやるには持ち運びに不便そう。
じゃあPSPはどの位置にいるんだろう? その点をもっとSCEは押し出しても良かったはずだけど、PS2に引き続きハード発売後のソフト頼みといった印象がぬぐえない展示になってしまっていたのは残念。
私見だけれど、PSPはゲーム機ではなくどちらかというとPDAのようなカタチになればと思う。それでこそパソコンとPS2間でのデータのやりとりに便利そうだし、画面解像度が綺麗だから他メディアの新しい媒体として活躍する機会が多くなるかもしれない。
テーマパークに置いてもオモシロそうだ。GPSの機能を持ったソフトを起動させて、PSPを客が入場する時に1台必ず持たせ、空いているアトラクションはどこかわかったり、混んでいるアトラクションやレストランに通信を介して予約が出来る……。
携帯電話の機能では限界があるところで「専門分野」のそういったソフトが開発されればいいんじゃないかなと。……いずれディズニーシーなどにはそういったものが置かれそうだけれど。
そんなことを驚きのないゲームを見ながら考えていったところで、PSPはゲーム機としてはキラーハードにはなりえないだろうなと。じゃあ、ゲーム機って一体どういうモノがいいんだろう。……あれ、待てよ、PSPに触っているのは大人ばかりで子供がいない。
というか会場全体に子供がいない。いや、正確に言うと異常なまでに少ない。そもそもこのゲームショウに子供は来てるのか? そんなことを疑問に思いながら、キッズコーナーの存在を思い出した。
近年、ゲーム産業は「商業芸術」という存在になった。
リアリティ溢れ、技術力が詰まった、市場が大きい産業。たった10数年前には考えなかった状態。少なくてもポン(ゲームの始祖と言われる存在の1つ。ボールをお互いが持つ壁を移動させて打ち合い、ボールを打てなかった負けというシンプルなゲーム)や、インベーダーゲームの頃には、こんな産業になるとは誰も考えていないと思う。
やがてファミコンが登場し、ゲームは子供がやるものと相場が決まってしまった。
単純なルールと操作。そして中毒性のある内容。それがゲームの原点だった。
さて、話を戻してゲームショウ。その子供たちがやるべきゲームはどこに消えてしまったんだろう? ゲームショウでは子供専用ブースは会場の一番奥のスペースにひっそりと追いやられていた。悲しいことに広さは物販ブースと変わらない。このことから考えて、すでに「ゲームは子供のもの」という認識が古いということが嫌でもわかる。
なるほど、確かに現実的で派手なエフェクトや画面を使い、最高峰の技術の粋を集められて作られたゲームは複雑な操作と数多くの情報を瞬時に理解しなければいけない能力を必要とするし、そういったものは子供に敷居が高いのが良くわかる。それとソフトを買う経済力もジャマをする。
そうすると「ゲームは大人のもの」になってしまったんだろうか?
1年前、あるサッカーゲームに興味があり、試しにプレーしたところ3分もしないうちに止めてしまったことがあった。
そのサッカーゲームの説明書には「別々のボタンを3つ同時に押すとマイナスでグラウンダーのパスができる」といった内容が書いていて、純粋に「そんな操作できるか」と。
内容はリアル志向を追及したサッカーゲーム。ああ、だから操作を複雑にして、実際のプレーをする為にはこれほどの苦労が必要なんだよということを教えているのかどうかは定かじゃないけど、そんな操作を必要としないといけないほどサッカーゲームというのは敷居が高くなってしまったんだろうか?
とてもじゃないけれど、本当のサッカー選手並みの練習量でようやくプレーできるんじゃないかとか思ってしまった。もちろん練習のタイプは違うけどね。
リアル志向を追求するなら、あくまで極論だけれど実際にボール型のコントローラーといったインターフェースを用意してあげればいい。もしそういうモノがあったとして、そのサッカーゲームをやるかって話になったら、それはまた別だけれど。
複雑な操作性と一種のマゾスティックな精神を持たないとプレー出来ないようなゲームというのが今の主流になってしまった。しかもそういうゲームに限って、たいした中毒性がないんだよね。じゃあ、それはゲームなのだろうか?
そもそも、そんなゲームを大人が買うのか? 昔のせいぜい6ボタンがインターフェースの限界だったコントローラーの時代ならともかく、複雑な操作を必要とするゲームなら、大人より子供の方が柔軟な発想で受け入れやすいはず。
でも、思い通りに行かないサドスティックなゲームを子供がやるだろうかという疑問は、そんなゲームは大人でもやらないだろう。では誰がやるのか? 答えは明確「一部の限られた大人」、いわゆる「大きなお友達」がプレーする。
この層はメーカーを裏切ることがないんだよね。出されたものは必ず買っていくから。恐らくそれは自分にとってゲームという存在がつまらないと感じない限りは永遠に。
だから必ずこの層に対して焦点を当てればゲームは消費されていく。新たな新規消費者を獲得することなく、いつの間にか「ゲームは限られた大人のもの」になってしまった。
結果、驚きと変化のないゲームが生産されていき、子供と大人に楽しむことが出来ないモノが登場していく。この流れは喜ばしいことじゃなくて回避すべき状態だと思う。できるなら娯楽の原点へ戻るのがベストだろう。では娯楽の原点とは何だろう?
子供の頃を思い出してみよう。例えば目の前にボールが1つあったとして、それを使って今から友達と遊ぶとして、一体何をして遊べるだろうか?
少し前に「塊魂」というゲームが発売された。主なルールは「転がす」。たったそれだけ。ただそれだけのルールなのに不思議と中毒度が高い。そしてゲームとしての評価も高かった。ルールが1つだけの単純なゲームなのになぜここまで評価を受けたのだろう。
前述に戻ろう。子供の頃、ボール1つで永遠と遊ぶ頃が出来たことがあると思う。ボールじゃなくて、他のものでもいい。でも、基本的な遊びのルールはたった1つ、「その道具を使う」だけ。ただ、そこには限りなく溢れる「想像力」が付いてきたはずだと思う。
想像力があるからルールが1つだけでも永遠と楽しむことが出来る。「塊魂」はまさにその想像力から可能性の1つを取り出して世に出されたゲームなんだよね。けど、その単純明快なゲームは子供も大人も関係なく楽しむことができる。そこにはゲームの根本的な楽しさが詰まっているなんだ。
つまり素材を追求すること自体忘れていないか、と。
リアリティ溢れるゲーム、うん、それはいいけど、じゃあそのゲームってどこが楽しいのって聞いたとき、返ってくる答えって大体「リアルだから」とかそういうのだと思う。少なくても俺が聞くときの答えって大体そうなんだよね。
でもそれって楽しいだろうか? もっと素材そのものだけで遊ぶことってできないのかな? 想像力を加えるだけで遊びは無限に広がる可能性を持っているのに、みんなそれを見逃してないかな?
ボタン1つでも楽しめるような、シンプルかつ中毒性の高いゲームの登場を俺は期待しているんだけれど、それってわがままかな? 少なくても大作の続編を期待するよりかは単純なことだと思うんだけどな。
そんなことを考えながら、キッズコーナーの一角、「昔のゲームで遊んでみよう」というところを見てみると、親子で笑顔になりながら、またちょっと難しい顔をしながらも一生懸命コントローラーを動かしている姿を見ることが出来た。ファミコン時代のゲームを相手に、必死で。
ほら、「娯楽の原点」ってこんな具合に意外と簡単なものだったりする。
毎年来て思うことだけれど、ゲームショウって言うところは、ゲームの展示会でありながらゲームを展示していない気がする。少なくても万人受けするゲームばかりじゃないよね、と。
そう考えると、「ゲームはオモチャである」という考え方を持つ任天堂が独自で展示会を開く理由もわかるし、できることなら、そういう考えで開いてもらいたいなと思う。
少なくても、一部の大人やコスプレイヤーとカメラ小僧の溜まり場じゃないと思うんだよなあ。(ちなみに今年のゲームショウ入場者数はプレス日を除く一般日のみで合計127,229人、その内小学生以下は23,685人と全体の2割にも満たなかった)。
そんなことを思いながら、来る時の面子と別れ、会場であった現在バリバリのクリエイターをしている友人と一緒に車で帰宅中、「気になっているゲームとかあるんだろうか?」とか思って話をしてみると。
「ゲームっていうか、コンパニオンはどうしたら落とせるんだろうな?」
……ああ、うん。ゴメン。聞いた俺が悪かったよ。っていうか、まぁそういう健全な(?)楽しみもあるかと妙に納得しながら、ゲームショウのレポートはこれにて終了。